YouTubeの動画コンテストで消費者の行動喚起に成果 -- 東芝
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081106/318660/?ST=ittrend
重厚長大な企業イメージの東芝だが、多様化する消費者とのコミュニケーション手段として、CGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)の活用に積極的だ。「YouTube」日本版初のスポンサーチャンネル開設企業となり、ブランディングにも効果を上げている。前例もないところに踏み込んでいって、結果まで発表した東芝の姿勢には非常に好感がもてる。東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チームの荒井孝文氏(写真1)は2008年11月5日、「NETMarketing Forum Fall 2008」で講演し、YouTubeのほか「GREE」「MySpace」などCGMサイトを広告・宣伝に活用した具体的な事例とその成果の詳細を語った。
荒井氏はまず、CGM活用の目的は「新しい東芝ファンを作って、東芝のサイトへ誘引すること」と、「東芝ブランド、商品への親近感を持ってもらうために、人が集まるCGMサイトへ出て行ってブランディングを行うこと」の2点があると説明。
その目的を達成するための基本的なポイントとして、従来の東芝サイトに無い面白い「コンテンツ」、広告誘導以外でアクセスを集める「バイラルによるPV (ページビュー)増加策」、「動画コンテンツ活用」、話題となるメディアを使う「パワーメディアの活用」の4点を挙げた。
講演では2006年12月以降に実施した事例として、東芝製品を使ったマジックの動画をYouTubeで配信した事例、携帯電話のキャラクター 「トウシバ犬」を活用したGREEでの事例、日本初のYouTube広告出稿事例、携帯電話のキャラクター「Bob Born & Born Family」を使ったMySpaceでの事例などを紹介した。
コンテスト入賞作品の視聴回数は90万回以上
最新の取り組みとして解説したのは、YouTubeのコンテスト機能を日本で初めて活用した「マイ・ペッツ・アワード by TOSHIBA」(写真2)。2008年7月から3カ月間開催した。YouTubeに一般の人がアップロードしている動画ではペット動画が圧倒的に多いことに着目し、ペットを題材にしたという。
動画コンテストを製品の訴求につなげるために、静かさが特長の掃除機「クワイエ」、空気清浄機能付きのエアコン「大清快」、携帯電話「Sportio」の3製品について、犬や猫、トウシバ犬が登場するオリジナルムービーを用意。投稿作品の再生前後に配信した。
ターゲットは20~30代女性をメーンとした。YouTubeの中だけで告知してはユーザー層が限られると考え、AdWords広告を活用し、最初はペット好きの人から、動画好きの人、一般のインターネットユーザーへとターゲットを広げていった。
その結果、動画を募集した3週間の動画投稿件数は483件、当初1カ月間の投票数は8309票となった。この結果について荒井氏は、「日本で初め ての(YouTube上での)コンテストなのでどう評価していいかは分からない」としながらも、米国の事例などから判断すると、いい数値だったという。
製品宣伝用に作った動画の視聴回数は36万回以上、コンテスト入賞作品の視聴回数は90万回以上に達した(YouTubeモバイルなどでの再生は視聴回数には反映されていない)。
動画視聴者の25%が東芝サイトで製品情報を閲覧
また、コンテスト終了後にネット調査を実施し、ブランディングなどにどのような効果があったかを分析した。調査は「Yahoo!リサーチ」のモニター、3万2660人から回答を得た。
その結果、マイ・ペッツ・アワードのサイトを「確かに見た」人は6.7%、「見たような気がする」人も含めると15.8%に達した。荒井氏は「か なり高い数字だと思う」と評価している。さらにYouTubeに週1回以上アクセスする人に限定すると、「確かに見た」人は11.4%、「見たような気が する」人も含めると25.4%に達した。
動画視聴後の行動は、「家族や友人とこのサイトを話題にした」が26%、「ブログやSNSでこのサイトを話題にした」が10.2%、「東芝のホー ムページで東芝製品について調べた」が25.2%、「東芝のホームページ以外のインターネット上で、東芝製品について調べた」が24.4%、「お店に行っ て東芝製品を見てみた」が11.8%という結果になった。何らかのアクションを起こした人は56.7%に上った。荒井氏は、3カ月間にわたる長期間のキャ ンペーンなのでこのような成果が出たと推測している。
最後に荒井氏は、「家電製品ではネットで情報収集する人が5割以上を占める。ただ、サイトを見てすぐ買うわけではなく、数カ月後に購入が当たり 前」と、消費者の現状を説明。そのため、「中長期的な効果指標が大事で、ブランディングも重要。費用対効果を考えると、中心はネットマーケティングになっ ていく。いろいろな形で取り組んでいきたい」と、今後の抱負とともにネットマーケティングの重要性を示して講演を締めくくった。
ただ、東芝クラスの企業が行うPR成果としては、不満が残るものだったのではないのだろうか?米国内ではYoutube のサイトとしての広告媒体価値についてもかなり疑問符が付いているし、日本国内での東芝のこの結果を見て、Youtube に対して、積極的な態度になる企業は多くない気がする。ニコニコ動画はさらに厳しいか。