HDTV動画もインターネットで視聴,勢いづくBlu-rayに新たな"刺客"
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080225/294638/
東芝がHD-DVDから撤退することを決めた。キッカケになったのは,米Warner Brothersが,それまでHD-DVDとBlu-rayの両方式でリリースしていた映画を,Blu-ray方式に一本化することを決めたことである。 この結果,米ハリウッドメジャーの映画スタジオのシェア(市場占有率)はBlu-ray陣営が68.4%,HD-DVD陣営が22.8%となり,両陣営に 決定的な差が付いた。2月に入るとBest BuyやWal-Mart Stores,Amazon.comなど米国の小売店大手が次々とBlu-ray方式の支持を表明,東芝がHD-DVDから撤退する決定打となった。日本 でもビデオレンタル事業者などによる研究会が,期間限定ながらBlu-ray対応ソフトのレンタルを開始するなど,Blu-ray優勢の雰囲気が定着しつ つある。
2006年のソフト販売を機に表面化したHD-DVDとBlu-rayによる次世代DVD規格の争いは,Blu-rayが勝利を収めた。ただし, このままBlu-rayが順調に普及するかという点については,予断を許さない。急速に市場規模を拡大しているインターネットを使った動画配信が, HDTV(高精細度テレビ)動画の配信に乗り出したからだ。
2007年9月1日,デジタルテレビ向けポータルサービスの「アクトビラ」が,HDTV作品を含む映像コンテンツの配信サービスを開始した。 2008年1月15日には米Appleが同社のコンテンツ配信サービス「iTunes」でHDTV作品を含む映画のレンタル事業を開始するなど,世界的に HDTV動画をネット配信する動きが本格化している。また日本では2008年3月末に,NTTグループの次世代ネットワーク(NGN)を利用したIPTV サービスの開始も予定されており,VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを含むHDTVによる映像配信が行われるとみられている。
こうしたなか,映像配信の重要性の高まりを象徴する出来事が起きた。2008年2月12日,レンタルビデオ事業大手であるTSUTAYAグループ のTSUTAYA BBが,アクトビラ上での映像配信サービスを3月に開始すると発表した。サービス開始から3カ月以内にHDTVによるコンテンツ配信を開始する予定であ る。TSUTAYA BBの親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はまだ本業のレンタルビデオ事業で次世代DVDのレンタルを開始しておらず, HDTV映像のソフトレンタルは次世代DVDとネット配信が同時期に始まるか,むしろネット配信が先行する可能性が出てきた。
デジタルコンテンツ協会の調査によると,2002年に2722億円だった国内のDVD販売市場は,2005年の3915億円をピークに2006年 には前年比約19%減の3184億円と減少に転じた。2006年に前年比25%増の2858億円と成長を続けるDVDレンタル市場も,2005年の前年比 約102%増の伸びと比べて勢いは急速に落ちている。こうした旧来の映像ソフト売上に対して,動画配信市場は2002年の39億円から毎年2倍を超える急 成長を継続して続けており,2006年には647億円まで拡大している。
AppleのSteave Jobs・CEOは「(動画配信による映画のレンタルは)購入する場合に比べて価格が安く,視聴者のすそ野が広がるだろう」と語る。ネット配信は,コンテ ンツを見るのに店舗に出かける必要がなく,24時間いつでも見たいものを見られる。レンタルの作品リストがそのまま自宅のライブラリーになるわけで,単に レンタル市場を置き換えるだけでなく,DVD販売の市場もある程度取り込みながら市場の拡大が見込まれる。HDTVコンテンツの覇者を巡るBlu-ray の戦いは,HD- DVDから動画配信へと相手を変えて続くことになりそうだ。
次世代の記録メディアを超えて、ネットでのコンテンツ配信が将来的に取って代わるというような記事も最近増えてきている。物理媒体の直感的な操作性のようなものがしばらくは勝ると個人的には考えているので、あまりそういった論調に安易に同調しないことにしているが・・・。